2.1政治懇談会報告

 本田雄三さん(熊本県議会議員)、井本正広さん(熊本市議会議員)と、トイロメンバーによる第2回政治懇談会をリモートにて開催しました。参加者の自己紹介の後、2021年秋、テルサでおこなったトイロメンバーと公明議員さんとの政治懇談会での参加者からの要望を受けて、本田さんが取り組んできた県議会代表質問と県の対応、県の財政支援を後押しするための永田町訪問(井本熊本市議とともに)などの活動報告を伺いました。そのあとはフリートークで、各参加者から熊本県として推し進めてほしい不登校支援、多様な学び方あふれる社会の実現に向けた要望が出されました。以下、要約と私見を交えて記します。

 一番多く出された意見は、不登校に限らず、公立学校の外で展開されている多様な学び方をしている子どもへの財政支援を早急に実施しいてほしいというものでした。学校外での学びを選択している、あるいはせざるを得ない状況に追い込まれている子ども達の理由はさまざまですが、フリースクールに通う、ホームスクールする、家にこもる、教育支援センターを利用する、プレイパークやその他の場所で過ごすなど、さまざまな過ごし方・育ち方をしています。家にこもることも自分と向き合う大切で不可欠な時間だと思います。しかし、その過程を越えて、動こうとするとき、フリースクールやその他の居場所を利用するにも、お金がかかります。普通教育機会確保法では、子どもが学校外での学びを選択する場合、その重要性が示され、経済性支援を含めた支援が明記されています。
 しかし全国では不登校の3.7%しかフリースクール等の民間施設を利用していないのが実情のようです(不登校新聞」代表 石井志昂 談)。その中には、お金がない、交通手段がないなどの理由で、フリースクール等に通いたくても通えない子どもも含まれています。そうした窮地に立たされた子どもに対し、財政支援をするのは、自治体として義務教育の理念に照らして、当然の義務と言えるでしょう。いままで曖昧だったこの事実にスポットライトを当てたのが、普通教育機会確保法です。同法施行以来、全国の自治体で、こうした子ども達への財政支援の事例がどんどん増えており、ここ一年では急増しています。熊本県は完全に出遅れていると言っても過言ではありません。これに関連して、交通費や食費の支援だけでもしてもらいたいという意見も寄せられ、教育行政・福祉行政の連携を求める声も上がりました。この出遅れの現状を取り戻すためには、私たち市民があちこちで声を上げること、そして、心ある政治家に働いてもらうことも有効です。

 これに関連して財政支援をおこなう際には、どのような目的に使用するのかというガイドラインの策定が不可欠になります。ここで懸念されることとして、子どもが学校外でおこなっている利用料のかかる活動の自由さが損なわれないようなガイドラインになるかどうかということです。大人は狭い意味での学力向上に直結するような活動のみに価値を見出しがちで、非認知能力と呼ばれるような、その子にとってまさに今、必要と感じられる社会的自立のための時間と空間の使い方には、価値を見出せない向きがあります。これは日本の教育制度の長年にわたる歪みがもたらした固着した教育観との指摘もあります。それはunicefの「子どもの幸福度ランキング」でこれまで3回(2007年、2013年、2020年)首位となったオランダの教育制度との違いをみても気づくことがきます。こうした子ども中心の営みを大切にする学び舎や居場所のよさを積極的に肯定するようなガイドラインとすることが大切です。その一方で公的支援を制度化するためにはガイドラインによって、子どもの心身の安全も保障できなければなりません。問題はガイドラインづくりのメンバーと作成過程にあると考えます。行政のプロジェクトチームを立ち上げ、そのメンバーに、教育、福祉の職員のみならず、学校外の学びの当事者・関係者を数多く入れ、民主的な熟議を通じて、学校外の学びの多様性が担保される形でのガイドラインの作成が希求されます。

 メンバーのフリートークでは、最近の動向として、熊本県内のフリースクール等を指導要録上の出席扱いとする動きが2018年度からの3年間で倍増しているという報告が県教委からあったとの報告がありました。これは喜ばしい動向です。しかし、自治体による出席扱いの温度差はいまだに解消されていません。これに関しては県が主催する不登校連絡協議会に各自治体の教育長が出席することで解決できるでしょう。
 同じように明るいニュースとして、熊本市内のみならず阿蘇郡のある中学校でも、オルタナティブスクールがおこなっている評価を各学校が記録する指導要録の評価として用いるようになってきたという知らせもありました。(その反対に出席扱いになっていないために内申書の評価がつかず、受験で不利益を被ったというケースも)
 こうした各自治体による温度差を県として解消していくためにも、県教育長出席のもと行われる不登校連絡協議会の定期開催が急がれます。

 2021年秋に続き、今回も公明議員さんに働きかけて、学校外で学ぶ子ども達への財政支援について、議会の代表質問でしっかりと訴えてもらい、県政が少しずつ動き始めた実感を得ることができました。民主主義制度の国に住んでいる私たちには参政権がありますが、それを普段の生活で感じるのは、投票の時だけという人も多いのではないでしょうか?しかしそれはとんでもない間違いです。
 税金の使い道は誰がどうやって決めるのか、それは議会に出席する人々の意思によって決まっていくのです。私たちが熱い思いを持って、志高い議員に働きかければ、議員が動き、予算が動きます。それぞれがそれぞれの人脈で、党派に関わらず、より多くの議員に働きかけていくことの大切さを最後に訴えたいと思います。

懇談会への出席者(50音順)
石村かよさん(大分県立芸術文化短期大学准教授、NPO法人「生活と教育」理事)
井本さおりさん(熊本オルタナティブ教育協会:水俣支部)
生魚雅也さん(くまもとゼロスクール副代表)
加藤千尋さん(フリースクール地球子屋代表)
佐賀岡りえさん(熊本オルタナティブ教育協会副理事長)
仙波達哉さん(熊本学習支援センターセンター長)
田上善浩さん(WING SCHOOL校長)
寺尾恵美子さん(フリースクールテラ学び舎)
中村篤志さん(フリースクールZIONを代表して参加)
中山真生さん(いわさかハウス)
永井あづみさん(森の自分学校代表)
廣岡むつみさん(インクルーシブ教育を推進する保護者)
松本幸枝さん(熊本オルタナティブ教育協会監事)
矢野美枝さん(フリースクールe.a.o校長)
山田朋和さん(学び舎あとらぼ”熊本サドベリースクール”代表)
公明党
本田雄三さん(熊本県議会議員)
井本正広さん(熊本市議会議員)

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