本年4月に就任された木村敬熊本県知事は、現在、県内の各自治体をひとつひとつ訪問し、地元の一般住民の声を聴く企画「お出かけ知事室」を進行中だ。9月28日、わが南阿蘇村でも開催されたので、勇んで参加し、フリースクールへの財政支援と、それを利用する家庭への補助金の創設についてお願いしてきた。
【嬉しい発見】
木村知事が、このような企画を実行してくれたこと自体、私たち県民にとっては大変ありがたいことだ。他の都道府県知事さんにも、同じような試みをしている方はおられるが、少なくとも前知事の時代にはなかったことだ。知事曰く「私は人の話を聞くのが好きで、いろんな人の話から、自分にはない発想を得て、自分の考えを練り上げて、いいものをつくり出していくのが自分のやり方」と、このような趣旨のことをおっしゃった。なるほど、ただのパフォーマンスではなく、そもそもそういう考え方を大事にする方なのだと私は理解した。
また知事は「福祉と教育」これが、私の政治の2本柱ですということを、1時間半の懇談会の中で3回以上、口にされた。不登校の子どもたちは、憲法や子ども基本法で保障された教育の権利を奪われている。それにとどまらず、生存の権利すら疎外されているケースも少なくない。不登校は、まさに木村県知事がもっとも大事とする「福祉と教育」のど真ん中に立ち現れている課題なのだ。この日までに9か所で「お出かけ知事室」を開き、そのうちの6か所でフリースクールに関する声を聞いてきたとおっしゃっていた。
「不登校に関して、なにが一番の課題だと感じますか」という知事の筆問に対して私は答えた。
「義務教育の一番の課題は、義務教育の選択肢がほぼ学校一択しかないこと。益々多様化する価値観のなかで育つ多様な教育ニーズをもった現代のこども達に対応するためには、民間の手による多様な義務教育の選択肢としての学び場が必要で、そのためには民間への財政支援が不可欠です。」
これに対して、知事は前向きに捉えてくださり、来月から関係者や有識者による協議会を立ち上げると応えてくれた。そして時間はかかると思いますが、これからも意見を聞かせてください、と結ばれた。
【木村知事に期待】
知事は生まれながらのハンディキャップを持ちながら、これまで生きてこられた方である。きっと社会的な弱者の心が分かる方だと信じている。この「お出かけ知事室」で、知事とまじかに接し、言葉を交わして、市井の感覚をしっかりと持ち合わせている方なのだと感じた。
いま話題の信州型フリースクール認証制度を構築するにあたって、長野県では一部の学校関係者や研究者だけでなく、民間の活動家や一般県民も会議のメンバーに入って一年間の議論を重ねて創り上げている。しかも結果的に予定よりも多い委員の半数近いメンバーが民間や一般市民だと言う。さらに制度の説明会も全国にオンラインで公開され、熊本県民である私でさえ、簡単に参加できた。こうしたオープンな制度設計のあり方が、21世紀には主流となるだろう。そうでなければいい制度は創れない。一つひとつの自治体に足を運んで、市民に耳を傾ける木村知事は、そういう心の通った行政の進め方をしてくれるのではないかと期待している。
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